あたためたい
年明けに初めて開かれたマーケットは、冬の寒さが幾分やわらぐと感じるほどの賑わいだった。近代化が進み、露店で物を売る文化が廃れつつある土地だが、このマーケットだけは別物らしい。 新年を祝う意味合いもあるのだろう、通常の…
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続きを読む →「お前じゃないと、いやなのに」 ぼそり、と呟かれた言葉に、アーチャーはハッとして顔を上げた。 安宿の一室。点かなかった照明の代わりに、フロントから頂戴してきたロウソクの炎が隙間風に揺らめいている。 明と暗がさざ波の…
続きを読む →※本編にて、土蔵内で二度目の獣化をしたアーチャーに自身の血を分け与えようと、士郎が工具で手を切ることを試みる辺りから分岐します。本編では最終的に血を与えませんでしたが、あの時、士郎がアーチャーに血を与えていたらどうなって…
続きを読む →ゆらゆらと立ちのぼる白い湯気が、キームン特有の独特の香りを鼻孔に届ける。 出来の良い香木で燻したかのようなスモーキーな香りと、シュガーシロップのような甘い香り。相反する香りのようで、しかしながら複雑に絡み合い、絶妙な…
続きを読む →お願いだから嘘と言って 2020.08.25 告げられた言葉が持つ本来の意味とは裏腹に、言葉を発した本人には怒りすら見て取れた。どういった思考回路を経れば、この結論に達するのか甚だ不明だが、衛宮士郎自身も驚きと戸惑いを…
続きを読む →「――投影トレース、開始オン――」 スペルを口にすると、ガキン、と撃鉄を下ろす音が脳内に響いた。 神経は表裏を替え、人としての身体が神秘を行使する部品と成る。 周囲から吸い上げたマナと、己の身の裡で生成するオド。そ…
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続きを読む →「はあ……」 疲れをまとった溜め息が、口から漏れた。 うねるコンクリートを掴む足取りは、ヨタヨタという形容がぴったりだ。肉体的な疲労というより、精神的な面からきているものが大きい。 ふと視線を上向けると、壁のように…
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